2025/8/24 年間第21主日 お説教

 [8月24日/年間第21主日]


[お説教] 


今日の福音で、主イエスは、はっきりと宣言されます。 

「人々は、東から西から、また南から北から来て、神の国の宴会の席に着く。」 

希望の巡礼を歩んでいる私たちは今、この人々に加わって、ともに歩んでいます。

 

「神の国の宴会」とは、どのような宴会でしょう。 

聖年についての文書、「希望は欺かない」の中で、死後の永遠のいのちについて、 次のように述べられています。 

「それは、神との完全な交わりに神の限りない愛を観想しそれに参与するところにあるのです。わたしたちが今希望のうちに味わうものを、そのときには実際に目にするでしょう。」 

この永遠のいのちこそが、神の国の宴会なのです。そして、希望の巡礼者は、神の国の宴会という愛の完全な交わりを目指しているのです。そして、この愛の交わりには、この巡礼には、あらゆる人が招かれているのです。 


この宴会は、もう始まっています。 

この地上の愛の交わりは完全ではありませんが、愛の交わりは、確かに始まっているのです。私たちは今、神に愛されているからです。そして、私たちも、神と隣人を愛しているからです。私たちは、神と隣人を愛しているから、今日、こうして集まり、ともに祈っているのです。神を愛しているから、賛美と感謝をささげているのです。すべてのいのちを愛しているから、戦争が終わるように、あらゆる暴力がなくなるように嘆願するのです。愛を実行することができない自分を見つめ、姉妹兄弟とともに、神のいつくしみを求めるのです。そして、神と姉妹兄弟との交わりから、愛する力を受けて、それぞれの生活の場で、愛を実行するのです。

 

愛を実行しながら生きていくことは、苦しいことです。愛を実行すればするほど、うまくいかないというのが現実です。 

まさに、主イエスが言われるように、「狭い戸口から入るように努め」る生き方になります。それは、ヘブライ人への手紙の言葉を用いれば、「主は愛する者を鍛え」られるということです。主は、愛する喜びを与えるために、私たちを鍛えられるのです。 

「およそ、鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいと思われるのですが、後になると…義という平和に満ちた実を結ばせるのです。」 

本当の愛は、悲しみで始まり、苦しみが続き、最後に、喜びをもたらすのです。 

愛することは、正しいことです。そして、この地上で正しいことを行う時、苦しみや悲しみがともないます。しかし、この苦しみや悲しみこそが、本当の喜びをもたらすのです。 


愛することは、難しいことです。 

自分が愛だと思っていることが、愛ではないこともあるからです。 

私たちは、愛を実行する時、自分の行いが愛になっているかどうか、よく考える必要があると思います。自分が愛だと思っていることが、相手にとって愛でない時、愛は虐待になる可能性があります。 

今日の福音のたとえ話の中に、「不義を行う者ども」と呼ばれる人たちが登場しています。この人たちは、自分たちが愛を知っていると主張しています。この人たちは、自分が愛だと思っていることを、他の人に押しつけているだけかもしれません。 

愛とは、自分が行いたいことを行うことではありません。自分が満足することではありません。相手が望んでいることを行うことです。相手の、本当の幸せを考えて行うことです。愛は、本当に難しいことです。愛を実行する時、必ずと言ってよいほど、失敗や間違いをしてしまいます。逆に言えば、失敗や間違いの多さが、愛の深さであるとさえ言えます。失敗や間違いの経験を通じて、愛は深まっていくと言えます。

 

希望の巡礼者である私たちは、失敗や間違いで希望を失いません。 

「御一緒に食べたり飲んだりしましたし、また、わたしたちの広場でお教えを受けたのです」と主張して、過去の愛の交わりにこだわりません。日々、本当の愛の交わりを目指して、新たな交わりを、新たな愛の道を見出そうとします。 

希望の巡礼者の道は、すでにできあがっている道ではありません。歩んでいくことで、できていく道です。皆でつくっていく道です。

 

最後に、中国の偉大な小説家である魯迅の言葉を分かち合いたと思います。 

「故郷」という小説の中の最後の言葉です。 

「僕は考えたー希望とは本来あるとも言えないし、ないとも言えない。これはちょうど地上の道のようなもの、実は地上に本来道はないが、歩く人が多くなると、道ができるのだ。」 

希望の巡礼の道では、先になる者も後になる者もいません。神の国の宴会という、完全な愛の交わりを目指して、皆が、ともに歩む者となるのです。 

ともに歩むところが、希望の道となるのです。


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