11月16日 年間第33主日 お説教

日は、「貧しい人のための世界祈願日」です。
この日のための教皇メッセージで、次のように述べられています。
「地上の富、物質的な現実、この世の快楽、経済的な繁栄は、それらがいかに重要であっても、心を幸福にするには不十分です。富はしばしば人を惑わし、悲惨な貧困の状態をもたらします。それは、何よりも、神の必要性を認めず、神から独立して人生を歩もうとする貧困です。」
私たちは今日、思い起こし、謙虚に認めなければなりません。私たちは皆、貧しい者であることを。ですから、今日の祈願日は、まず第一に、私たち自身のために祈る日なのです。貧しい私たちに、良いものを与え続けてくださる神に、心からの感謝をささげる日なのです。
神からいただいているものを分かち合っていない罪、隣人に貧しさを押しつけ、自分だけが豊かになろうとする罪を認める日なのです。本当の豊かさを願い求める日なのです。豊かさを分かち合う勇気と知恵を祈る日なのです。
私たちに与えられている豊かさはすべて、神の恵みです。私たちは、この恵みを分かち合う時、本当の意味で豊かになるのです。この恵みを奪い合おうとする時、多くの尊いいのちが失われ、地球といういのちが傷つくのです。
私たちは、神から離れて生きていけません。私たちは、隣人と、貧しさと豊かさを分かち合わなければ、不幸になるだけなのです。
今日の福音で、主イエスは、戦争、暴動、災害、飢饉、疫病などが起こっても、「世の終わり」ではないと言っておられます。むしろ、「証しをする機会となる」と、私たちを励ましておられます。私たちが証しすること、それは、神の愛です。地上のものに危機が訪れる時こそ、神の愛により頼む時だと、私たちを励ましておられるのです。
しかし、多くの人は、神の愛を忘れ、「惑わされ」ます。愛なんて当てにせず、争いに勝つしか道はないと思い込まされます。
そうして、争いが起こります。自分の国や自分の家族を守ることに必死になります。

自分の生きている世界を閉ざすようになります。外から入ってくるものをすべて、脅威と見なします。何かが自分と違うだけで、関わろうとしなくなります。
外で起こっていることに、無関心になります。自分の世界に属するものだけが大切なもの、善で、外にあるものはどうでもよいもの、悪であると見なすようになります。
こうして、他人の喜びをねたみ、まわりの人の悲しみや苦しみを感じなくなります。
自分が攻撃されていると感じると、過剰に反撃します。
すべては、自分が、今、持っている豊かさを守るためです。そこに、喜びも感謝もなく、怒りや不平不満があるだけです。ともに祈ることはなくなり、集まれば、そこにいない人の悪口だけが語られるようになります。そして、そうした時にあっても、神の愛を信じ、愛を宣べ伝え、愛し続ける人は、迫害されます。
今、迫害が起こっています。この迫害は、愛を深める殉教をもたらしません。この迫害の恐ろしさは、愛がなくても、楽しく生きていけると思わせる快適さなのです。互いを大切にし合いながら、苦労して何かを得る必要などないと思わせる便利さなのです。
そして、この快適さや便利さは、お金さえ払えば、だれでも手に入れることができるという誘惑なのです。
こうして、世の終わりが訪れ、すべてが滅びるのでしょうか。断じて、そうではありません。世の終わりとは、滅びではありません。世の終わりは、いのちです。
主イエスは今日、「忍耐によって、あなたがたは命をかち取りなさい」と励ましておられます。「何があっても、祈り、愛し、皆が生きるようになりなさい」という意味です。
「神の愛の豊かさを分かち合うために、今は、神の愛を渇き求める貧しさを分かち合いなさい」という励ましです。「自分が神からいただいた、よいものを、隣人と分かち合うことで、隣人とともに豊かになりなさい」という、真の幸いへの、愛に満ちた招きです。
この励まし、招きは、私たちの希望です。
希望の巡礼者にとって、世の終わりとは、愛です。神の前での貧しさと、神からの豊かさを分かち合う愛です。
最後に、始めに引用した教皇レオ十四世の言葉の続きを分かち合いたいと思います。聖スウグスティヌスの言葉です。
「いっさいの希望を神に置きなさい。神が必要だと感じなさい。それは、神によって満たされるためです。神がいなければ、あなたが所有するいかなるものも、あなたをいっそう空虚にするだけだからです」(『詩篇講解』)

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